「外国人採用にはどれくらいコストがかかるのか、正直よく分からない……」──採用難が続くなか、外国人採用を検討する企業が増える一方で、募集〜ビザ〜生活サポートまで、どこにどんな費用が発生するのかが分かりづらいという声が多く聞かれます。本記事では、外国人採用にかかるコストの内訳・相場・日本人採用との比較・コスト削減のポイントを、人事・採用担当者向けにわかりやすく整理しました。自社で使えるチェックリストや、実際にコスト削減に成功した企業事例も紹介します。
外国人採用コストの全体像
外国人採用にかかるコストは、大きく分けて「採用前」「採用後」「継続運用」の3フェーズで発生します。日本人採用と同じく求人広告や人材紹介料がかかる一方で、在留資格(ビザ)の申請・更新や、日本語教育・生活サポートなど、外国人採用ならではの費用も加わります。まずは全体像をつかむことで、「どこにどれだけコストがかかっているのか」を可視化し、ムダな支出を見直すことができます。
採用前(募集・紹介)にかかるコスト
採用前のコストは、一般的に以下のような項目で構成されます。
- 求人広告費・ダイレクトリクルーティング費:国内外の求人媒体、SNS、海外求人サイトなどの掲載費。
- 人材紹介会社への成功報酬:年収の20〜35%程度が目安。高度人材や特定技能外国人ではやや高くなる傾向があります。
- 選考関連費:オンライン面接の通訳、適性検査、日本への渡航費の一部負担など。
- ビザ申請・書類作成コスト:行政書士への依頼費用(1件あたり5〜10万円前後が目安)。
これらを合計すると、外国人採用1名あたりの初期コストはおおよそ40〜80万円に収まるケースが多く見られます。採用ルートや職種、年収レンジにより増減するため、自社の採用単価を一度算出しておくことが重要です。
受け入れ後・継続運用で発生するコスト
採用が決まったあとも、外国人採用では受け入れと定着のためのコストが発生します。
- 住居・生活サポート費:社宅提供、敷金・礼金の一部負担、生活オリエンテーションなど。
- 教育研修費:日本語研修、マナー研修、業務マニュアルの多言語化など。1人あたり月1〜3万円の投資をする企業もあります。
- 在留資格の更新費用:更新手数料や専門家への委託費用。更新期間は1〜5年と在留資格の種類によって異なります。
- 定着支援コスト:メンター制度・1on1面談・カウンセリングなど、離職防止のための仕組みづくり。
これらを踏まえると、外国人1名あたりの年間トータルコストは100万円前後を目安として把握しておくとよいでしょう。もちろん日本人採用でもオンボーディングや研修コストは発生するため、単純比較ではなく「投資対効果」で見ることが重要です。
日本人採用とのコスト比較と注意点
「外国人採用は日本人採用より高い」と感じる方は多いですが、実際には初期コストの構造が違うだけで、年間ベースで見ると大きな差が出ないケースも少なくありません。ここでは、日本人採用と外国人採用のコスト構造を比較し、誤解されやすいポイントを整理します。
平均相場から見る日本人採用との違い
一般に、日本人採用の1人あたり採用単価は約50〜70万円と言われています。内訳は求人広告費、採用管理システム費、説明会・面接にかかる人件費、人材紹介の成功報酬などです。
一方で、外国人採用は前述のように初期コストが60〜90万円ほどになるケースが多くなります。その理由は、紹介手数料がやや高くなりやすいことに加え、ビザ手続きや生活立ち上げにかかるサポートコストが上乗せされるためです。
ただし、採用難が続く職種や地方企業にとっては、欠員を抱え続けること自体が大きな機会損失になります。欠員期間が短縮され、生産性の高い外国人材が長期定着するのであれば、トータルで見た採用コストは決して割高とは言い切れません。
誤解されやすいポイントと注意点
外国人採用コストで誤解されやすいのは、次のようなポイントです。
- ビザ関連費用が「毎年高額にかかる」と思われがちだが、実際は更新期間が長い資格も多く、年平均にすると負担は限定的。
- 日本語教育・生活サポート費は一見コストに見えるが、離職率低下や生産性向上によって十分に回収可能。
- 人材紹介会社のフィーだけで比較し、「安い紹介会社」を選んだ結果、ミスマッチや早期離職でかえって採用単価が悪化するケースもある。
重要なのは、単年度の支出額ではなく、中長期のリターンとセットでコストを見ることです。そのためにも、自社の採用単価・定着率・生産性を数値で捉えておくことが欠かせません。
外国人採用コストを抑える実践メソッド
外国人採用のコストは、「やみくもに削る」のではなく、投資対効果が低い部分を見極めて最適化することがポイントです。ここでは特に効果の高い2つの方法を紹介します。
採用ルート・紹介手数料の見直し
まず見直したいのが、採用ルートと紹介手数料の設計です。
- 海外の大学・日本語学校との直接提携、SNS・コミュニティを活用したダイレクトリクルーティング。
- 複数の紹介会社を比較し、成功報酬率や返金条件、定着支援の有無を含めて「トータルコスト」で選定する。
- 紹介会社側と「一定期間の定着を前提としたフィー体系」を交渉し、早期離職時のリスクを軽減する。
インバウンドテクノロジー(IBT)では、役員・実績由来の独自ネットワークを活かし、通常の求人広告ではリーチしにくい高度外国人材やグローバル人材とのリファラルルートを活用することで、採用単価とマッチング精度の両立を支援しています。
公的支援・助成金と社内体制の整備
もう1つの大きなポイントが、公的支援制度と社内体制整備の活用です。
- 厚生労働省や自治体が用意する「外国人材受入れ支援」「特定技能受入れ」に関する助成金を確認する。
- 在留資格や労働時間・給与など、労働法令・入管法に関する基本ルールを社内で共有する。
- 受け入れ部署にメンターを配置し、オンボーディング期間中のフォロー体制を明確にする。
助成金の活用次第では、1人あたり年間数十万円規模のコスト補填につながる場合もあります。また、ルールと体制を整えることでトラブルや離職を防ぎ、結果的に再採用コストの削減にもつながります。
自社で使えるコスト試算チェックリスト
ここからは、外国人採用コストを具体的な数字で把握するためのチェックリストを紹介します。以下の表を参考に、1人あたり・年間あたりのコストを試算してみてください。
チェックリストで押さえたい主要項目
| 項目 | 内容 | 参考コスト目安 |
|---|---|---|
| 求人・紹介費 | 求人広告費、人材紹介成功報酬 | 40〜80万円 |
| ビザ関連費 | 在留資格申請・更新、行政書士費用 | 5〜10万円 |
| 住居・生活サポート費 | 社宅・住居補助、生活立ち上げ支援 | 10〜30万円 |
| 教育・研修費 | 日本語研修、ビジネスマナー研修 | 月1〜3万円 |
| 定着支援費 | メンター制度、1on1、相談窓口 | 年間数万円〜 |
実務では、このチェックリストをスプレッドシート化し、職種や勤務地別に「シミュレーションシート」として運用する企業が増えています。IBTでは、外国人採用コストの試算テンプレートもご用意できますので、必要な方はお問い合わせください。
ケーススタディ:コスト削減に成功した企業事例
ここでは、実際に外国人採用コストの見直しに取り組み、成果を上げた企業のケーススタディを紹介します。どちらも単なる人材紹介にとどまらず、周辺インフラまで含めた「エコシステム型」のサポートによって、コストの最適化と定着率向上を実現しています。
製造業A社:採用単価を約35%削減
地方の製造業A社では、慢性的な人手不足から日本人採用の求人広告を多数出稿し続けていましたが、応募数が伸びず、採用単価は1人あたり約90万円にまで膨らんでいました。
そこでIBTと連携し、外国人採用に切り替えるにあたり以下の施策を実施しました。
- 高度外国人材・特定技能外国人の候補者にアクセスできる独自ルートを活用。
- 紹介会社の見直しと、定着期間に応じたフィー体系への切り替え。
- 日本語研修と現場OJTを組み合わせたオンボーディングプログラムの設計。
結果として、初年度から1人あたりの採用コストは約58万円にまで削減。さらに2年以上の定着率が90%を超えたことで、再採用コストも抑制されました。
宿泊業B社:エコシステム活用で総コストを最適化
都市部のホテルを運営するB社では、インバウンド需要の回復に伴い外国人採用を加速させていましたが、住居手配・通信インフラ・生活サポートなど周辺コストが膨らみ、現場から「何にいくらかかっているか分からない」という声が上がっていました。
IBTは創業当初から外国籍支援に注力しており、観光・宿泊・通信など周辺インフラを含めた「自社エコシステム」を構築しています。このネットワークを活かし、B社に対しては以下を支援しました。
- 住居・通信などをパッケージ化したサポートスキームの導入。
- 社内公用語としての英語運用を前提にした研修とマニュアル整備。
- 外国人スタッフと日本人スタッフ双方に向けたクロスカルチャー研修。
その結果、表面上の採用コストだけでなく、生活立ち上げやコミュニケーションギャップに起因する「見えないコスト」も削減され、現場からは「戦力化までの時間が短くなった」という声が多数上がりました。
まとめ|外国人採用コストを“投資”に変えるために
外国人採用コストは、一見複雑で高く感じられるかもしれません。しかし、その中身を分解すると、日本人採用でも本来かかっているはずのコストと重なる部分も多く、制度や支援を活用することで十分に最適化が可能です。
大切なのは、
- 採用前・採用後・継続運用の3フェーズでコスト構造を可視化すること。
- 日本人採用との単純比較ではなく、「欠員による機会損失」や生産性向上も含めて投資対効果を評価すること。
- 独自ルートやエコシステムを持つパートナーと組み、採用〜生活〜定着までを一気通貫で設計すること。
外国人採用コストを「不透明な支出」から「将来への投資」に変えるために、まずは自社の現状を整理し、どこに改善余地があるのかを明らかにするところから始めてみてください。
よくある質問(FAQ)
外国人採用のコストは、日本人採用よりどれくらい高くなりますか?
求人・紹介費に加えてビザ手続きや生活サポートなどが必要なため、初期の採用コストは日本人採用よりやや高くなる傾向にあります。ただし、欠員期間の短縮や高い定着率によって、年間ベースの総コストで見ると大きな差が出ないケースも多く見られます。
ビザ関連のコストは毎年かかりますか?
在留資格の種類によって更新期間が異なるため、毎年高額なコストがかかるわけではありません。更新が1〜5年ごとの資格も多く、年平均にすると負担は限定的です。行政書士など専門家と連携し、計画的にスケジュールと予算を組むことが重要です。
外国人採用コストを抑えるために、今すぐできることは何ですか?
まずは1人あたりの採用単価と定着率を洗い出し、「どこにいくらかかっているか」を見える化することが第一歩です。そのうえで、採用ルート・紹介会社の見直し、公的支援・助成金の活用、オンボーディング体制の整備など、効果の高い部分から順に着手していくことをおすすめします。