外国人の雇用を考えている経営者や担当者の方の中には、
「”技能実習”と”特定技能”どちらで採用した方がいいのか?」「技能実習生を特定技能へ移行させる方法は?」
といったような悩みを抱えている人もいるのではないでしょうか?
そこで、本記事では2つの制度の違いから技能実習から特定技能へ移行させる方法まで、丁寧に解説していきます。
技能実習制度とは
技能実習制度とは、開発途上国等から外国人を実習生として受け入れ、先進国である日本の技術・知識を教え、開発途上国等の経済発展に協力する制度です。
厚生労働省のデータによると技能実習生数は2019年10月末時点で383,978人となっています。
技能実習の在留資格は1~3号に区分されており、1号は入国1年目で技能を習得、2号は2・3年目で習熟、3号は4・5年目で熟達するための活動を行います。
特定技能制度とは
特定技能制度とは、深刻化する日本の労働人口不足を解消するため、特に人材確保が困難な産業分野に一定の技術・知識を有している外国人を即戦力として受け入れるために導入された制度です。
出入国在留管理庁のデータによると特定技能在留外国人数は2021年6月末時点で29,144人となっています。
特定技能の在留資格は1号と2号に区分されており、1号は一定の技術・知識が必要な業務、2号はさらに熟練した技術や経験が必要な業務のために活動を行います。
特定技能制度について詳しくは以下の記事をご覧ください。
特定技能とはどんな制度?1号・2号の違いや採用の流れを徹底解説
特定技能制度と技能実習生制度の違い
特定技能制度と技能実習生制度について、それぞれの違いを解説していきましょう。
目的の違い
技能実習の目的はあくまで国際協力です。そのため、働き手になってもらうというより、実習生には自社の技術や経験を教えてあげるという意識で受け入れることが本来の意義になります。
一方、特定技能の目的は日本の労働人口不足解消です。そのため、即戦力として働いてもらうという意識で問題ありません。
在留期間の違い
技能実習の在留期間は1号が1年以内、2号が2年以内、3号が2年以内です。また、1~3号合計で最長5年の在留が可能です。
特定技能の在留期間は1号が通算5年となっています。ただし、1年6ヶ月または4ヶ月ごとに更新が必要です。
一方2号は在留期間に上限がありませんが、3年、1年または6ヶ月ごとに更新が必要です。
受け入れ可能な業種の違い
技能実習で受け入れ可能な業種は農業、漁業、建設、食品製造、繊維・衣服、機械・金属等の85職種です。
詳しくは厚生労働省のサイトをご覧ください。
特定技能で受け入れ可能な業種は以下14分野です。
- 介護(訪問系サービスを除く)
- ビルクリーニング
- 素形材産業
- 産業機械製造業
- 電気・電子情報関連産業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
※2号の受け入れは⑥建設⑦造船・舶用工業のみです。
受け入れ人数の違い
技能実習生の人数は、受け入れ企業の常勤従業員数(雇用保険に加入している社員数)に応じて異なります。詳しくは下記の通りです。
- 301人以上→常勤従業員数の20分の1まで
- 300人~201人→15人まで
- 200人~101人→10人まで
- 100人~51人→6人まで
- 50人~41人→5人まで
- 40人~31人→4人まで
- 30人以下→3人まで
- 2人以下→受け入れ不可
※上記は技能実習1号の上限人数であり、実習生が1号から2号に移行した場合は新たに1号の実習生を上限人数まで追加して受け入れることができます。
一方、特定技能の受け入れ人数は基本的に無制限です。ただし、介護と建設業は受け入れ企業の常勤従業員数までと定められています。
受け入れ方法の違い
技能実習の受け入れ方法には、「団体管理型」と「企業単独型」の2つの方法があります。
「団体管理型」は技能実習生を組合等で受け入れて管理し、実習自体は日本の企業で実施する方法です。
それに対し、「企業単独型」は日本の企業が技能実習生の管理から実習の実施まで一貫して行う方法です。手続き等の手間がかかるので技能実習の多くは「団体管理型」となっています。
特定技能の受け入れ方法には、「国内在留者の採用」と「海外からの採用」の2つの方法があります。
どちらの方法であっても、外国人の管理から業務まで一貫して受け入れ企業が行います。しかし、業務に至るまでの手続きが面倒なので、弊社のような登録支援機関を通して採用・管理していくことが一般的です。
従事できる業務の違い
技能実習は156作業に細かく分類されています。実習生には作業計画に沿った作業をしてもらう必要があります。
詳細は厚生労働省のサイトをご覧ください。
特定技能は幅広く様々な業務をしてもらうことができます。基本的に労働力確保が目的なので、技能実習より細かく分類されていません。
しかし、広範囲ではあるものの以下の通り従事できる業務は定められています。
特定技能の業務についての詳細は以下の記事をご覧ください。
【2021年版】特定技能の14業種・職種一覧まとめ
転職の可否の違い
技能実習は原則転職できません。ただし、受け入れ企業が経営困難になるなど、やむを得ない場合は転職できます。
一方、特定技能は同一業務内で可能です。介護や宿泊、外食業など業務区分が1つしかないものは同一分野に転職すれば問題ありません。
しかし、素形材産業や産業機械製造業などは業務区分が複数あるため、注意が必要です。例えば、同じ素形材産業でも「機械加工」の業務でしか在留が認められていない者が「溶接」の業務で転職することは不可能です。
逆に、異なる産業分野でも同一業務であれば転職は可能です。例えば、素形材産業と産業機械製造業には同じ「溶接」の業務があるので素形材産業の「溶接」から産業機械製造業の「溶接」の転職は可能となります。
家族帯同の違い
技能実習の在留資格では海外から日本へ家族を連れて来ることは出来ません。
特定技能1号に関しても家族の帯同は認められていません。特定技能2号に関しては、配偶者とその子供に限り日本へ連れてくることが認められています。
入国時試験の違い
技能実習は基本的に試験等必要ありません。例外として、介護に関しては日本語能力試験N4(基本的な日本語を理解できるレベル)の合格が必須です。
特定技能は技能試験と日本語能力試験に合格する必要があります。特定技能の取得にこれらの試験が必要な理由としては、即戦力として直ぐに業務に取り組むことができるレベルでなければならないからです。
特定技能の試験について詳しくは以下の記事をご覧ください。
特定技能試験の「日本語試験」と「技能試験」を分かりやすく解説 – インバウンドテクノロジー株式会社
ただし、技能実習2号の修了者であれば試験は免除されます。
登録支援機関について
登録支援機関とは、特定技能人材の業務から生活までサポートする機関です。また、出入国管理庁に各種書類を提出することも重要な役割となっています。以下で詳しくご説明します。
1号特定技能外国人に対する支援
まず、1号特定技能外国人に対する支援です。登録支援機関は、特定技能外国人へ仕事内容でのサポートや社会的な支援をすることが義務付けられています。
弊社も登録支援機関に当てはまるので、外国人の方を献身的にサポートしています。ちなみに、特定技能2号になると登録支援機関を通す必要がなくなります。
特定技能に係る出入国在留管理庁への申請
次に、特定技能に係る出入国在留管理庁への申請です。特定技能に関わる書類の準備は専門知識が必要になるため、多くの企業は登録支援機関に委託しています。
登録支援機関について詳しくは下記のサイトからご確認ください。
支援機関と管理団体3つの違い
登録支援機関と管理団体は、似ているようで違います。簡潔に言うと登録支援機関は特定技能向け、管理団体は技能実習向けのものです。そしてよくみてみると3つの違いがあるので、以下で詳しくみていきましょう。
1.支援の目的が大きく異なる
まず、支援の目的が大きく異なります。登録支援機関の目的は在留資格「特定技能」を保有している外国人の方の‘‘支援‘‘です。
一方、管理団体の目的は在留資格「技能実習」を保有している外国人の‘‘監督‘‘です。管理団体は外国人の‘‘支援‘‘ではなく、3か月に1度以上受け入れ先企業を監査し、必要に応じて企業を指導することが義務付けられています。
2.民間企業や個人事業主でも登録可能か
それでは、民間企業や個人事業主でも上記の役割を担えるのでしょうか。結論から申し上げますと、登録支援機関は可能ですが管理団体は不可能(非営利団体である協同組合が監督するため)と国によって決められています。
3.料金形態が異なる
料金形態についても登録支援機関と管理団体では異なります。登録支援機関の委託費用相場は月2万〜3万5千円であるのに対し、管理団体との契約では月3万〜5万円ほどです。
技能実習のメリットとデメリット
ここまで特定技能と技能実習の違いを解説してきましたが、どちらで採用すべきか悩まれている方も多いかと思います。そこでここからはそれぞれのメリットとデメリットを紹介しましょう。
まずは技能実習生を受け入れるメリットとデメリットをご紹介します。
技能実習のメリット
- 会社として国際貢献に関わることができる。
- 学ぶ意欲が高い外国人を雇うことができる。
技能実習生を受け入れるメリットは、会社に活気をもたらすことです。社外には国際貢献をしているというアピールになりますし、社内でも従業員の士気を高める効果を期待できます。
技能実習のデメリット
- 雇用人数に制限がある。
技能実習のデメリットは労働力として活用するには物足りないことです。あくまでも「実習」の要素が強いので雇用人数にも厳しい制限があります。
特定技能のメリットとデメリット
次に特定技能の在留資格を持つ外国人を受け入れるメリットとデメリットをご紹介します。
特定技能のメリット
- 一定の知識や経験がある優秀な外国人を即戦力として雇うことができる。
- 基本的に雇用人数の制限がない。(介護と建設業を除く。)
特定技能のメリットはとにかく働き手として活用することができることです。技能実習生よりもレベルが高いので、即戦力になります。
特定技能のデメリット
- 外国人に転職されてしまう可能性がある。
特定技能は同一業務内での転職が可能なので、せっかく特定技能1号の外国人を受け入れても5年間の途中で他社へ採用されてしまうこともあります。特定技能2号の在留期間は無制限ですが、転職の可能性として同様のことが言えます。
技能実習から特定技能へ切り替えるには?
また、既に技能実習生を受け入れている場合は条件次第で特定技能へ切り替えることも出来ます。その方法をご説明します。
移行可能な職種
技能実習から移行できるのは、特定技能の対象である以下14業種です。
- 介護(訪問系サービスを除く)
- ビルクリーニング
- 素形材産業
- 産業機械製造業
- 電気・電子情報関連産業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
移行の要件
移行の要件は以下になります。
- 技能実習2号を良好に修了していること。
- 特定技能1号の職種と作業内容が技能実習の時と同じであること。
技能実習3号についても技能実習計画を修了することで移行が可能です。しかし、技能実習1号は移行ができないのでご注意下さい。
また、移行する際は技能実習と特定技能の作業内容が一致している必要があるので事前にご確認ください。
上記2点の要件を満たしたうえで日本語能力試験と技術試験が免除になり、移行が可能となります。
必要な手続き
移行する際に必要な手続きは人によって若干異なりますが、基本的には以下4点の用意が必要になります。
- 在留資格変更許可申請書の提出
- 写真(縦4㎝×横3㎝)の用意
- 申請人のパスポート及び在留カードの提示
- その他必要書類の提出
(参照元: 在留資格変更許可申請 出入国在留管理庁)
技能実習から特定技能へ切り替える際の注意点
技能実習から特定技能へ切り替えるには、書類上の手続きだけでなくあらゆる面での準備が大切です。受け入れ企業側が正しく準備をするために注意すべきことを解説していきましょう。
業務内容が一致しているか
技能実習の作業と特定技能の業務が一致していなければ移行できません。
例えば、建設系で技能実習生の時「表装」の作業をやっていたのであれば、特定技能の「表装」の業務に移行することは可能ですが、「左官」に移行することは不可能です。
社内制度や体制が整っているか
特定技能の在留資格で働く外国人には、日本人と同等かそれ以上の給与を支払わなければなりません。また、有給休暇についても日本人従業員と同じ日数を付与しなければなりません。
他にも、外国人が理解できる言語でサポートする体制を整えておくことが必要です。こちらに関しては弊社のような登録支援機関に委託することで解決できるのでご安心ください。
外国人だからといって単に安価な労働力ではありません。日本人を雇用する場合と同じくらい受け入れ企業には大きな責任が伴います。
上記の点を理解したうえで特定技能への切り替えをご検討ください。
まとめ
いかがでしたか。技能実習と特定技能は似ているようで異なる性質の制度ですね。
日本の労働人口不足が問題視されている昨今、外国人労働者は必要不可欠な存在になってきています。本記事を通して、どちらの在留資格を持った外国人を採用する方がよいか是非お考えください。
また、技能実習生を既に受け入れている企業様にとって特定技能へ移行する際の参考になれば幸いです。