特定技能の在留資格が新設されてから、特定技能人材の採用が増えてきています。しかし、特定技能人材を採用する際に必ず理解しておかなければ行けないことが非常に多いです。
「特定技能所属機関とは何?」「登録支援機関ってどんなところ?」
「委託先の見極めるポイントは何?」「自社でも登録支援機関はできるの?」
など、難しいことや不明なことが多いと思います。
今回は、特定技能人材の採用を検討している方や、登録支援機関の見極め方や自社での登録支援機関は可能なのか?など素朴な疑問について解説していきます。
特定技能所属機関とは
まず”特定技能所属機関”とは何か?
特定技能の在留資格を持って働く方が所属している機関を示しており、つまり雇用主ということです。
特定技能人材を雇用する際には、定められた義務的支援を実行しなければなりません。この義務的支援が非常に細かく時間的なコストがかかります。
”特定技能所属機関”である雇用主だけで義務的支援を行うのは非常に大変です。
そのためにあるのが登録支援機関です。
登録支援機関とは
特定技能人材を採用するためには、”特定技能所属機関”または”登録支援機関”が義務的支援を行わなければいけないと定められています。
雇用主から義務的支援実施について業務委託を受けているのが”登録支援機関”ということです。
登録支援機関の役割や支援内容
”特定技能所属機関”と”登録支援機関”について少しご理解いただけたかと思うので”登録支援機関”は何をしてる場所なのか説明していきましょう。
簡単に説明しますと、特定技能人材が生活や業務、社会活動を円滑にするためにサポートを行う機関です。
登録支援機関のサポートは「義務的支援」と「任意的支援」に分かれています。ここでは、それぞれについて解説していきます。
義務的支援
まずは義務的支援として定められている10項目について詳細に触れていきましょう。
①事前ガイダンス
3時間かけて雇用条件などを特定技能人材が理解できる言語にて説明します。
現在はオンラインや対面など実施方法については緩和されていますが、データを送り読んでもらうだけにするのは不可です。事前ガイダンスを実施した日時と本人の署名をもらい、出入国在留管理局に提出します。
②出入国の際の送迎
上陸手続きを受ける港・飛行場から受入れ機関事務所や外国人当人の住居までの送迎と、出国時の港・飛行場までの送迎が義務となっています。出国時には保安検査場まで同行し、実際に入場するまで見届けなければなりません。
③住居確保・生活に必要な契約支援
日本での住まいや、電気・ガス・水道などの契約への同行です。外国籍の方にも対応している不動産物件の情報提供を行い、必要に応じて住居探しを手伝わなければなりません。
住居探しにおいては広さの決まりがあります。1人あたり7.5平方メートル以上であることが求められます。
④生活オリエンテーション
日本で生活するにあたり、ゴミ出しのルール、交通ルール、病院の利用方法などです。生活する上で、必要なルールや知識の説明を最低8時間行う必要があります。
⑤公的手続き等への同行
住民票を取得するため役所への同行などが必要です。
⑥日本語学習の機会提供⑥日本語学習の機会提供
就労・生活する地域の日本語教室や日本語教育機関に関する入学案内の情報を提供し、必要に応じて特定技能人材に同行して入学の手続の補佐を行うことが求められています。
また、自主学習のための日本語学習教材やオンラインの日本語講座に関する情報を提供し日本語学習教材の入手やオンラインの日本語講座の利用契約手続の補助を行うことが求められています。
⑦相談・苦情への対応
特定技能人材から職業生活、日常生活又は社会生活に関する相談又は苦情の申出を受けたときは、延滞なく適切に応じるとともに、相談等の内容に応じて特定技能人材への必要な助言、指導を行う必要があります。
⑧日本人との交流促進
特定技能外国人と日本人との交流の促進に係る支援は、必要に応じ、地方公共団体やボランティア団体等が主催する地域住民との交流の場に関する情報の提供や地域の自治会等の案内を行い、各行事等への参加の手続の補助を行うほか、必要に応じて特定技能人材に同行して各行事の注意事項や実施方法を説明するなどの補助を行わなければなりません。
⑨転職支援
特定技能所属機関が、人員整理や倒産等による受入側の都合により特定技能人材との雇用契約を解除する場合には、特定技能としての活動を行えるように、支援を行う必要があります。
⑩定期的な面談・行政機関への通報
特定技能人材の労働状況や生活状況を確認するため、特定技能人材及びその監督をする立場の方(直接の上司や雇用先の代表者等)それぞれと定期的(3ヵ月に1回以上)な面談を実施する必要があります。
任意的支援
上記に記載したのは、あくまでも義務的支援であり任意的支援もございます。
- 入国時の服装や、入国後に必要となる金額の説明
- 特定技能所属機関で支給される物
- 携帯電話の契約などの解約手続きへの同行
- 日本語能力試験の受験支援
- 苦情の連絡先一覧を提示する
このように特定技能人材が自立して生活でができるところまでサポートするのが任意的支援です。
義務的支援だけ見ても時間的コストがかかるのは事実です。そのため、自社で登録支援機関を行うのではなく業務委託を行う企業がほとんどです。
どのような会社が登録支援機関に登録しているのか
では、業務委託を行う”登録支援機関”は何社くらいあって、どんな企業が登録しているのか?という部分を深堀りしていきます。
出入国在留管理庁によると、2021年9月17日現在では6,438社が登録をしています。
登録支援機関になっているのは、技能実習の監理団体や人材紹介会社、社労士や行政書、その他の企業です。登録されているのは6,400社を超えていますが、実態としては登録社数の2割り程度しか実際に支援業務を行っていません。
業務委託を行うと少なからず委託料が発生します。特定技能人材をたくさん採用しているならば、自社で登録支援機関を行っている企業も増えてきています。
登録支援機関の登録要件
次は、そんな企業の方に対して登録支援機関になるためにはどんな要件があるのか見ていきましょう。
少し細かいですが、要件は下記通りです。
- 支援責任者及び1名以上の支援担当者を選任していること
- 以下のいずれかに該当すること
- 登録支援機関になろうとする個人又は団体が、2年以内に中長期在留者の受入れ実績があること
- 登録支援機関になろうとする個人又は団体が、2年以内に報酬を得る目的で、事業として、外国人に関する各種相談業務に従事した経験を有すること
- 選任された支援担当者が、過去5年間に2年以上中長期在留者の生活相談業務に従事した経験を有すること
- 上記のほか、登録支援機関になろうとする個人又は団体が、これらと同程度に支援業務を適正に実施できると認められていること
- 1年以内に、責めに帰すべき事由により、特定技能外国人又は技能実習生の行方不明者を発生させていないこと
- 支援の費用を直接又は間接的に外国人本人に負担させないこと
- 5年以内に、刑罰法令違反(出入国又は労働に関する法令違反など)による罰則を受けていないこと
- 5年以内に、出入国又は労働に関する法令に関し著しく不正又は不当な行為を行っていないこと
登録支援機関への登録申請方法
上記要件を満たしていれば、下記申請書類を郵送または直接持参して出入国在留管理局に提出いたします。
- 登録支援機関登録申請書(法定様式)
- 登記事項証明書(法人の場合)
- 定款又は寄付行為の写し(法人の場合)
- 役員の住民票の写し(法人の場合)
- 登録支援機関の概要書
- 登録に当たっての誓約書
- 支援担当者の履歴書,就任承諾書,支援業務に係る誓約書の写し
申請の結果が出るまでに約2ヶ月程度と言われています。
委託する際の登録支援機関の選び方
自社で登録支援機関になるのも時間的なコストがかかることに加えて、やはり特定技能人材に継続して働き続けてもらうためにも第三者に委託する方がメリットは大きいと思います。
登録支援機関をどのようなポイントを抑えて選べばいいのかお伝えしますね。
先程も記述しました通りで、登録支援機関が6,400社以上になると採用窓口担当者の方は頭を悩ませるところだと思います。
そこで選ぶ際のポイントは全部で3点です。
- 特定技能人材の母国語対応
- 月々の業務委託費用
- 登録支援機関の所在地や対応地域
①対応可能言語
まず、欠かすことが出来ない言語の対応についてです。
特定技能人材に対して、母国語で対応できることが求められます。選んだ登録支援機関が特定技能人材の母国語に対応していなければ、在留資格の許可は下りません。
多言語に対応している登録支援機関もあれば、対応言語数が少ない場合もございます。
②月々の管理費
そして、2点目はコストについてです。
自社で登録支援機関を行う企業も増えてきていますが、一般的には委託をする企業が多いのは事実です。気になる業務委託費用は、月額20,000円〜35,000円くらいが提示価格として多くなっています。業務委託費用は、特定技能人材が在籍している期間は発生します。
③所在地
最後に登録支援機関の所在地や対応地域についてです。
全国の企業様を対応している登録支援機関もあれば、所在地の都道府県のみ対応している登録支援機関もございます。
登録支援機関一覧を見て直接連絡して確認してみるのが良いでしょう。
登録支援機関に関するまとめ
特定技能人材は、人材不足の企業にとってとても魅力的な採用です。ただし、特定技能に関わらず外国籍人材の採用については細かいルールや法律が決まっています。もちろん企業としてコストは安いに越したことはありませんが、経験や実績の多い登録支援機関を選択するのも一つの方法だと考えています。