技能実習生の在留資格は「技能実習1号」から始まり、その後は一定の要件を満たすことによって1号→2号→3号へと移行し、日本での在留期間を延長することができます。
本記事では「技能実習3号」について、1号2号との違いやその移行要件、対応職種についてご紹介いたします。
目次
技能実習3号とは?
「技能実習3号」とは、技能実習2号の修了後に決められた条件を満たすことによって取得することができる在留資格です。技能実習1号が在留1年目に、技能実習2号が在留2〜3年目、技能実習3号が在留4〜5年目に該当します。
1号、2号、3号の違い
技能実習1号と2号、3号の違いは以下の表のようになっています。1号→2号→3号の順番でそれぞれ必要条件を満たすことで移行することが可能です。
1号 | 2号 | 3号 | |
在留期間 | 原則1年 | 2年(在留2〜3年目) | 2年(在留4〜5年目) |
対象職種 | 原則として制限無し | 85職種156作業 | 77職種135作業 |
必要条件 | ・原則2ヶ月間、座学の講習を受ける必要あり | ・1号の実習終了前に技能検定試験の基礎級(実技・学科試験)やこれに相当する試験に合格すること・より実践的な技能実習計画の提出・出入国在留管理庁の審査を通過すること | ・2号の実習終了前に技能検定試験の3級(実技試験のみ)やこれに相当する技能実習評価試験の実技試験に合格すること ・より実践的な技能実習計画の提出 ・出入国在留管理庁の審査を通過すること ・監理団体及び実習実施者は、一定の条件を満たし優良である者に限る |
技能実習3号を取得するには?
技能実習3号を取得するには下記の要件を満たす必要があります。
- 受け入れ先が優良実習実施者になることが必要
- 技能実習2号の修了と試験の合格が必要
- 移行対象職種は省令で定められた3号へ移行可能な職種、作業であること
- 3年間の実習終了後(2号修了後)、1ヶ月以上1年未満の一時帰国を行うこと
以下より、それぞれの条件について詳しくご紹介します。
受け入れ先が優良実習実施者になることが必要
まず、技能実習3号を取得するための要件として、受け入れ先である監理団体と実習実施者がそれぞれ優良な管理団体、優良な実施者の認定を受ける必要があります。
優良実施者になるための条件はこちら
優良実施者になるための条件は、出入国在留管理庁によると下記のように定められています。
優良な実習実施者の基準については、規則第15条において、同条第1号から第2 号までに掲げる事項を総合的に評価して、技能等の修得等をさせる能力につき高い水準を満たすと認められるものであること
規則第15条の各項目に関して詳しく知りたい方は、出入国在留管理庁の技能実習制度運用要領の105ページをご覧ください。
技能実習2号の修了と試験の合格が必要
技能実習3号の資格を取得するためには、まず技能実習2号を修了する必要があります。加えて、技能実習2号の修了前に、「3級の技能検定」または「これに相当する技能実習評価試験の実技試験」に合格する必要があります。
3号に移行できる職種や作業
技能実習3号に移行できる職種および作業はこの表でご確認ください。
職種 | 作業 |
農業関係 | |
耕種農業 | 施設園芸/畑作・野菜/果樹 |
漁業関係 | |
畜産農業 | 養豚/養鶏/酪農 |
漁船漁業 | かつお一本釣り漁業/延縄漁業/いか釣り漁業/まき網漁業/ひき網漁業/刺し網漁業/定置網漁業/かに・えびかご漁業/棒受網漁業 |
養殖業 | ほたてがい・まがき養殖 |
建設関係 | |
さく井 | パーカッション式さく井工事/ロータリー式さく井工事 |
建築板金 | ダクト板金/内外装板金 |
冷凍空気調和機器施工 | 冷凍空気調和機器施工 |
建具製作 | 木製建具手加工 |
建築大工 | 大工工事 |
型枠施工 | 型枠工事 |
鉄筋施工 | 鉄筋組立て |
とび | とび |
石材施工 | 石材加工/石張り |
タイル張り | タイル張り |
かわらぶき | かわらぶき |
左官 | 左官 |
配管 | 建築配管/プラント配管 |
熱絶縁施工 | 保温保冷工事 |
内装仕上げ施工 | プラスチック系床仕上げ工事/カーペット系床仕上げ工事/鋼製下地工事/ボード仕上げ工事/カーテン工事 |
サッシ施工 | ビル用サッシ施工 |
防水施工 | シーリング防水工事 |
コンクリート圧送施工 | コンクリート圧送工事 |
ウェルポイント施工 | ウェルポイント工事 |
表装 | 壁装 |
建設機械施工 | 押土・整地/積込み/掘削/締固め |
築炉 | 築炉 |
食品製造関係 | |
缶詰巻締 | 缶詰巻締 |
食鳥処理加工業 | 食鳥処理加工 |
加熱性水産加工食品製造業 | 節類製造/加熱乾製品製造/調味加工品製造/くん製品製造 |
非加熱性水産加工食品製造業 | 塩蔵品製造/乾製品製造/発酵食品製造/調理加工品製造/生食用加工品製造 |
水産練り製品製造 | かまぼこ製品製造 |
牛豚食肉処理加工業 | 牛豚部分肉製造 |
ハム・ソーセージ・ベーコン製造 | ハム・ソーセージ・ベーコン製造 |
パン製造 | パン製造 |
惣菜製造業 | 惣菜加工 |
繊維・衣服関係 | |
染色 | 糸浸染/織物・ニット浸染 |
ニット製品製造 | 靴下製造/丸編みニット製造 |
たて編ニット生地製造 | たて編ニット生地製造 |
婦人子供服製造 | 婦人子供既製服縫製 |
紳士服製造 | 紳士既製服製造 |
下着類製造 | 下着類製造 |
寝具製作 | 寝具制作 |
帆布製品製造 | 帆布製品製造 |
布はく縫製 | ワイシャツ製造 |
座席シート縫製 | 自動車シート縫製 |
機械・金属関係 | |
鋳造 | 鋳鉄鋳物鋳造/非鉄金属鋳物鋳造 |
鍛造 | ハンマ型鍛造/プレス型鍛造 |
ダイカスト | ホットチャンバダイカスト/コールドチャンバダイカスト |
機械加工 | 普通旋盤/フライス盤/数値制御旋盤/マシニングセンタ |
金属プレス加工 | 金属プレス |
鉄工 | 構造物鉄工 |
工場板金 | 機械板金 |
めっき | 電気めっき/溶融亜鉛めっき |
アルミニウム陽極酸化処理 | 陽極酸化処理 |
仕上げ | 治工具仕上げ/金型仕上げ/機械組立仕上げ |
機械検査 | 機械検査 |
機械保全 | 機械系保全 |
電子機器組立て | 電子機器組立て |
電子機器組立て | 回転電機組立て/変圧器組立て/配電盤・制御盤組立て/開閉制御機器具組立て/回転電機巻線製作 |
プリント配線板製造 | プリント配線板設計作業/プリント配線板製造作業 |
その他 | |
家具製作 | 家具手加工 |
印刷 | オフセット印刷/グラビア印刷 |
製本 | 製本 |
プラスチック成形 | 圧縮成形/射出成形/インフレーション成形/ブロー成形 |
強化プラスチック成形 | 手積み積層成形 |
塗装 | 建築塗装/金属塗装/鋼橋塗装/噴霧塗装 |
溶接 | 手溶接/半自動溶接 |
工業包装 | 工業包装 |
紙器・段ボール箱製造 | 印刷箱打ち抜き/印刷箱製箱/貼箱製造/ダンボール箱製造 |
陶磁器工業製品製造 | 機械ろくろ成形/圧力鋳込み成形/パッド印刷 |
自動車整備 | 自動車整備 |
ビルクリーニング | ビルクリーニング |
介護 | 介護 |
コンクリート製品製造 | コンクリート製品製造 |
RPF製造 | RPF製造 |
鉄道施設保守整備 | 軌道保守整備 |
### 3号に移行できない職種や作業
技能実習3号に移行することができない職種・作業は下記の表よりご確認ください。
職種 | 作業 |
農産物漬物製造業 | 農産物漬物製造 |
医療・福祉施設給食製造業 | 医療・福祉施設給食製造 |
紡績運転 | 前紡工程/精紡工程/巻糸工程/合撚糸工程 |
織布運転 | 準備工程/製織工程/仕上工程 |
カーペット製造 | 織じゅうたん製造/タフテッドカーペット製造/ニードルパンチカーペット製造 |
リネンサプライ | リネンサプライ仕上げ |
宿泊 | 接客・衛生管理 |
ゴム製品製造 | 成形加工/押出し加工/混練り圧延加工/複合積層加工 |
技能実習3号移行までの流れ
技能実習3号を取得するまでの流れは下記のようになっています。
- 技能検定3級に合格
- 3号技能実習計画認定の申請
- 一時帰国
- 在留資格の変更申請
以下より、各フローの詳細をご説明いたします。
技能検定3級に合格
まず最初のステップとして、技能検定試験の3級の実技試験やこれに相当する技能実習評価試験の実技試験に合格する必要があります。
特徴は、学科試験は課されず、実技試験のみという点です。
また、技能実習3号への移行を希望していない実習生も、帰国前に必ず3級相当の試験を受検する必要があります。
受検のタイミングは在留期限の2~3ヶ月前です。再受験は1回に限り認められており、2回以上受けることはできないので注意が必要です。
3号技能実習計画認定の申請
次に技能実習3号の2年分の計画認定の申請を行います。
申請する書類の中には実習生のサインが必須なものもあります。そのため実習生が一時帰国する前に、雇用条件の説明や締結が必要です。
また、申請には3週間から2ヶ月かかりますので、前もって手続きの準備が必要です。
一時帰国
第2号技能実習の修了後、第3号技能実習を開始するまでの間に、技能実習生は必ず1ヶ月以上1年未満の一時帰国をしなければなりません。
在留資格の変更申請
技能実習3号に移行したい実習生の中には一時帰国後にすぐにでも日本に戻ってきて働きたいという人もいれば、1年間という猶予を最大限に使ってゆっくり母国で休んでから日本に戻ってきたいという人もいるでしょう。
前者の場合、2号の在留期限から2ヶ月以内に戻ってくる実習生であれば、出入国管理局にする申請は「在留資格変更申請」になります。その後、在留資格変更の許可が下りれば日本に戻ってくることが可能です。
後者の場合、2号の在留期限から日本への入国が3ヶ月を超えるため「在留資格交付申請」を行う必要があります。この場合は在留資格が交付された後、母国の日本大使館にてビザの発行をすることによって、日本に入国することが出来ます。
技能実習3号から特定技能に移行するには?
技能実習3号から特定技能に移行するためには、下記の要件を満たす必要があります。
- 技能実習3号を良好に修了すること(技能実習を2年10ヶ月以上修了していること)
- 技能実習で習得した技能と、特定技能1号の業務で要する技能に関連性があると認められること
- 3号技能実習計画を満了すること
まとめ
以上、「技能実習3号」について、1号2号との違いやその移行要件、対応職種について紹介しました。本記事が、お役に立ちましたら幸いです。